全力オルカンでいい人、ダメな人の境界線を勝手に考えてみた

自分は全力オルカンでいいんだろうか。

それとも、もっと投資を勉強して高いリターンを狙った方がいいのか。逆に、そこまでリスクを取らなくても十分なのか。

SNSを見ても、答えは両極端です。

「初心者はオルカンだけ買っておけばいい」という人もいれば、「インデックス投資だけでは大してお金持ちになれない」という人もいる。

どちらにも一理あります。

ただ、30年後に必要なお金が3,000万円の人と1億円の人に、同じ投資方法を勧めるのは無理があります。

そこで今回は、オルカンが良いか悪いかではなく、自分が何%のリターンを取れば人生設計が成り立つのかから逆算して考えてみます。

そのうえで、

  • 全力オルカンでいい人
  • もっとリターンを狙う意味が出てくる人
  • むしろリスクを落としていい人

の境界線を「勝手に」引いてみます。

もちろん正解ではありません。ただ、資産運用のプロとしての考え方は参考になるのではないかと思っています。

数字を見たうえで「私ならどうするか」まで書くので、「人それぞれです」なんていう逃げの言葉は聞き飽きたよって人には、面白いと思いますよ。

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まずは、会社員の真ん中にいる40歳を想定

シミュレーションするなら、年収1,000万円の会社員を連れてきても、大体は将来安泰という結論になるので面白くありません。

そこで今回は、代表者として40歳、額面年収410万円の独身会社員を考えます。

国税庁の給与分布から見ると、日本の給与所得者の中央値はざっくり400万円台前半です。金融資産は100万円。こちらもJ-FLECの40代単身世帯の中央値を参考にしています。

その他の条件も併せて、以下としました。

項目今回の前提
年齢40歳
額面年収410万円
手取り年収330万円
金融資産100万円
投資期間65歳まで25年間
老後65歳~90歳
物価上昇率年3%
老後の年金手取り月16万円相当

年金は現在の厚生年金受給者の平均額を参考にしました。物価上昇率3%も、直近数年の日本から大きく離れない水準です。

ここで、シミュレーションの読み方だけ先に説明しておきます。

今回は、今の時代に合わせて物価上昇率を年3%としています。そのため、給料や投資金額が25年間ずっと同じ金額で固定されるわけではなく、物価上昇に合わせて増えていく前提で計算します。

例えば「月3万円を投資する人」なら、25年間ずっと3万円を積み立てるのではなく、今の3万円と同じ購買力の金額を投資し続けるイメージです。

給料も同様に物価上昇に合わせて増え、今の生活水準と投資余力は実質的に変わらないものとします。年金についても、現在の月16万円と同じ程度の購買力が維持される前提です。

つまり、この後に出てくる生活費や老後の必要資金は、すべて今のお金の価値で比べます。ここが今回の計算で特に重要なところです。

そしてもう一つ、重要なルールがあります。

投資しなかった手取りは、全部使っていることにします。

月3万円しか投資できない人は、それだけ今の生活水準が高い。月8万円投資できる人なら、それだけ少ない金額で今の生活が成り立っている。

この条件で計算してみたら、思っていた以上に差が出て面白いことになりました。

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月3万円、投資を相当頑張る必要がある

まず毎月3万円を投資する人。

年間36万円なので、手取り330万円のうち294万円を現在の生活で使っています。月24.5万円です。

老後に年金を月16万円もらっても、同じ生活を続けるなら毎月8.5万円足りません。65歳から90歳までの25年間で、ざっくり2,550万円を自分で用意する必要があります。

現在の金融資産は100万円。

ここから月3万円を25年間積み立てて2,550万円にするには、年率約6.1%のリターンがあれば達成できます。

ただし、この2,550万円はあくまで「今のお金の価値」で見た金額です。今回は物価が年3%ずつ上がるため、投資金額だけでなく運用でも物価上昇分をカバーする必要があります。

つまり、物価上昇率を考慮した実質リターンで年率約6.1%必要ということです。この実質リターンに物価上昇率3%を単純に加えると、必要な名目リターンは簡易計算で約9.1%となります(厳密には、物価上昇率は足し算ではなく掛け算で反映します)。

なかなかの数字です。

最近の株式市場を見ていると、「10%くらい普通じゃない?」と感じる人もいるでしょう。

でも、25年間にわたって年9%台のリターンを前提にするとなると、私は「オルカンを買っておけば大丈夫」とは考えません。

じゃあ、もっと投資を勉強して15%を狙えばいいのか。

実は、ここからが面白いところです。

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オルカン超え自体は、別に不可能ではない

「アクティブファンドの多くはインデックスファンドに負ける。だからプロでもインデックスには勝てない」

よく見る話です。

しかし、私はアクティブとインデックスの勝敗と、プロの運用とインデックスの勝敗がイコールになるとは思っていません。

公募の投資信託には、運用者側から見るとかなり大きな制約があります。

オープンエンドの投資信託は、投資家が好きなタイミングで買えて、好きなタイミングで売れます。

つまり運用者は、「今日から始めます」「10年後の今日で終わります」と自分で評価される期間を決められません。資金が入ってくれば買わなければならないし、大量解約が来れば売らなければならない。現金も管理する必要があります。

それに対して、

「今日から10年間、このお金を運用してください。目標は最終的にオルカンを上回ることです。」

という運用は、そもそも条件が違います。

私はこの条件なら、「多くのプロがインデックスには勝てない」と結論づける気にはなりません。

むしろ、単純な方法があります。株式の中でも、より大きなリスクを取る資産や銘柄へ寄せる。

例えば、みんな大好きNASDAQ100のような構成です。

将来オルカンに勝つかどうかは誰にも分かりません。ただ、より高いリターンを狙うために、ハイリスクのポートフォリオにするという考え方自体は難解なものではありません。

だから私は、「オルカン以上のリターンなんて狙わず諦めましょう」と言いたいわけではないのです。

高いリターンを狙う方法はあります。

問題はその先です。

期待リターンを上げれば上げるほど、そのために払うものが急激に増えます。

リスクも増える。
勉強する時間も増える。
自分で判断する回数も増える。

そして何より、努力したからといって結果がついてくる保証はありません。

年9%台のリターンがないと老後が成り立たない人が、さらに上を狙って何とかする。

それも一つの道です。

でも私なら、その前に別の数字を触ります。

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月5万円、たった2万円で話が変わる

同じ人が、今の価値の5万円相当を毎月投資するとします。

年間60万円なので、現在の生活費は270万円。月22.5万円です。

老後に年金を月16万円もらうなら、同じ生活を続けるために不足するのは月6.5万円。25年間では、今のお金の価値で約1,950万円です。

現在の金融資産100万円に加え、月5万円を25年間積み立てて1,950万円にするために必要な実質リターンを逆算すると、年率約1.5%。

物価上昇率3%を織り込んだ必要名目リターンは、約4.5%です。

月3万円では約9.1%。
月5万円では約4.5%。

変えたのは、毎月の投資額を2万円増やしただけです。

なぜここまで変わるのか。

一つは当たり前で、投資する元本が増えたから。

もう一つあります。

月5万円を投資できているということは、月22.5万円で現在の生活が成り立っているということです。

つまり、将来に回すお金が増えると同時に、老後に必要なお金まで減っています。

入金力が両側から効く。

資産形成で家計の見直しが重要視されるのは、このためです。

「固定費を見直しましょう」と言われても、投資好きにはあまり面白くない話かもしれません。

でも、今回のケースでは家計から月2万円を捻出しただけで、必要な名目リターンが約9.1%から約4.5%まで下がりました。

場合によっては、家計の見直しは資産形成の特効薬になり得ます。

年9%台の運用を長期間続ける方法を探すのと、毎月あと2万円を投資に回す方法を探す。どちらが簡単かは、人によって違うでしょう。

ただ、後者を検討せずに前者だけを探すのはもったいない。

そして、月5万円投資できる場合はどうすべきか。

私なら、全力オルカンにはこだわりません。

年4~5%程度の名目リターンで人生設計が成り立つなら、株式100%の値動きを全部受け入れなくてもいい。オルカンを主力にしながら債券などを入れ、リスクを落としても計算は合います。

もちろん、「もっと増やしたいから株100%にする」なら何の問題もありません。

ここは分けて考えます。

全力にしないと足りないのか、もっと欲しいから全力にするのか。

同じオルカン100%でも、意味は全然違います。

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月8万円、ほぼ運用に頼らなくていい

さらに、今の価値で8万円相当を毎月投資できる人。

年間96万円を投資するので、現在の生活費は年間234万円。月19.5万円です。

年金との差額は月3.5万円。

老後25年間で必要になる自己資金は、今のお金の価値で約1,050万円です。

一方、月8万円を25年間積み立てれば、実質ベースの積立元本だけでも2,400万円。現在の金融資産100万円もあります。

つまり今回の条件なら、実質的な運用益がゼロでも必要額を大きく上回ります。

ここまで来ると、私は全力オルカンにする理由を逆に聞きたくなります。

「もっと資産を増やしたい」

それなら分かります。

リターンは高い方がいい。当然です。

でも「老後のために株式100%にしなければならない」という状態ではありません。

ここまで入金できるなら、もっと値動きの小さい資産を組み合わせても十分届く。

投資で取るリスクを、自分で選べる側です。

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同じ年収なのに、結論はほぼ真逆

3人とも40歳。

年収410万円。

現在の金融資産100万円。

違うのは、毎月いくら投資に回せるかだけです。

項目3万円5万円8万円
今の生活費※月24.5万円月22.5万円月19.5万円
老後に必要な自己資金※約2,550万円約1,950万円約1,050万円
必要な実質リターン約6.1%約1.5%0%で十分
必要な名目リターン約9.1%約4.5%物価並みで十分

※現在の購買力ベース。投資額や収入は物価上昇に合わせて増えていく前提。

こうして並べると、「オルカンが最強か」という議論があまり重要ではなくなってきます。

商品は同じでも、その人がオルカンに求めている仕事が違うからです。

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全力オルカンの境界線は?

では、私はどこに境界線を引くのか。

ここからは私見をお伝えします。

必要リターン5%以下、私は全力オルカンにしない

必要な名目リターンが年5%程度までなら、私は全力オルカンにはしません。

オルカンを買わないという意味ではありません。主力にしてもいいと思います。

ただ、株式100%までリスクを取る必要はない。

債券などを混ぜて期待リターンが下がっても、それでも足りるなら、その余裕は使います。

もっと増やしたければ、リスクを取る選択もできます。

必要リターン5~7%、オルカンと相性がいい

このあたりが、私の中ではオルカンと相性のいいゾーンです。

ある程度のリターンは欲しい。

でも、毎日企業分析をしたり、売買判断に時間を使ったりするほどではない。

だったら、世界中の株式に広く投資して、長く持つ。

分かりやすい。

私なら、このゾーンで投資に時間をかけたくない人には、オルカン中心の運用を有力候補にします。

必要リターン7~10%、ここからは選択肢を吟味する必要がある

このゾーンになると、答えは一つではありません。

  • 全力オルカンでいく
  • 家計を見直して入金額を増やす
  • 収入そのものを増やす
  • 投資を勉強してより高いリターンを狙う

どれも選択肢になります。

ここで先ほどの話につながります。

私は「インデックスを上回ろうとすること自体が無駄」とは思っていません。

もっとリスクを取る。
投資対象を絞る。
企業を分析して個別株を選ぶ。

上を狙う方法はあります。

ただし、7%を10%にする、10%を15%にするという数%の差は、見た目ほど簡単ではありません。

期待リターンを高めるほど、必要な努力は加速度的に増えていく。これは資産運用の仕事をしてきて、強く感じていることです。

投資自体が好きで、勉強することも苦にならないなら挑戦する価値はあります。

そうではないなら、家計から月1万円、2万円を捻出する。あるいは、収入を増やす。

そちらの方が再現性の高いケースもあるでしょう。

このあたりから、「オルカンか、それ以外か」ではなく、自分がどの方法に時間と労力を使うかまで含めて考える必要が出てきます。

必要リターン10%超、私なら商品探しをいったんやめる

年10%を超えないと人生設計が成立しない。

ここまで来たら、私は「もっと儲かる商品」を探すのをやめます。

年10%超を達成する方法が存在しないと言っているわけではありません。実際に、それ以上のリターンを長期間出す投資家もいます。

ただし、それを人生設計の必要条件にするのは怖い。

かなりうまく運用し続けないと老後資金が足りない状態だからです。

それなら、

収入を増やせないか
今の生活費を下げられないか
働く期間を延ばせないか

私ならまずこちらを考えます。

年15%を狙える投資法を探し回るのは、その後です。

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今回の計算をそのまま信じない

ここまで具体的な数字を出しましたが、「月5万円なら老後は大丈夫」という記事ではありません。

今回のシミュレーションには、こちらに都合のいい前提もあれば、厳しく置いている前提もあります。

65歳まで安定して働き、物価上昇に合わせて給料や投資額も増えながら、積立を続けられる前提です。税金や運用コストも簡略化しています。

一方で、退職金や企業年金は入れていません。65歳以降の運用益もほとんど期待せず、老後も現在と同程度の生活水準を維持する前提です。

家族構成、住宅、収入、退職金、年金額が変われば答えは大きく変わります。

なので、9.1%や4.5%という数字そのものを覚える必要はありません。

私が見てほしいのは、

条件が変われば、必要なリターンも、取るべきリスクもこれだけ変わる。

ということです。

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「初心者はオルカン」は秀逸、でも全力でいいかは別

「初心者はオルカンだけ買っておけばいい」

この考え方自体はかなり秀逸だと思います。

投資信託はそれ自体で銘柄分散されています。よほど特殊な商品を選ばない限り、商品選びに何年も悩むくらいなら、早く投資を始めて時間を味方につけた方がいい。

この考え方を端的に表現できています。

だから、投資を始める人へのアドバイスとして「初心者はオルカンでいい」はよくできています。

ただし、「初心者はオルカンでいい」と「全力でオルカンがいい」は別の話です。

年4%程度で十分な人もいる。
年7%くらい欲しい人もいる。
年10%近く必要な人もいる。

必要なリターンが違うのに、全員が同じリスクを取る必要はありません。

逆に、「インデックス投資では大して儲からない。個別株を勉強すべき」という主張も、全員には当てはまりません。

年4%で十分な人が、なぜ毎日企業を調べて15%を目指さなければならないのか。

もちろん、15%取れればそちらの方がいいです。

私だって欲しいです(笑)。

でも、そのために使う時間や労力まで含めて考える必要があります。

一方で、年7~10%が必要な人なら話は変わります。

全力オルカンでいく。
家計を見直す。
収入を増やす。
投資を本気で勉強して上を狙う。

ここではじめて、これらを並べて比較する意味が出てきます。

だから私は、「何を買えばいいですか?」と考える前に、一度だけ別の数字を見てほしいと思っています。

自分はいったい、何%のリターンが必要なのか。

5%でいいのか。
7%欲しいのか。
10%近く必要なのか。

そこが分かれば、進む方向はかなり見えてきます。

全力オルカンでいい人。
もっと勉強してリターンを追求する意味がある人。
逆に、そこまでリスクを取らなくてもいい人。

その境界線は、オルカンの中にはありません。
自分の家計の中にあります。

そして今回の計算をして、「自分はオルカン100%までリスクを取らなくてもよさそうだ」と感じた人には、もう一つ考えてほしいことがあります。

「では、株式100%からリスクを落とすとして、何を持つのか?」

現金を増やすのか。
債券を入れるのか。
金を持つのか。

そもそも、なぜ分散するとリスクが下がるのか。ここは「オルカンを減らせばいい」で終わるほど単純ではありません。

私はリーマンショックを運用の最前線で経験しました。

その時に強く感じたのは、分散投資の価値は「値動きを小さくすること」だけではないということです。

暴落した時にも投資を続けられること。そして、期待していたほど資産が増えなかった時にも、人生計画を大きく崩さずに済むこと。

今回の記事で「そこまでリスクを取らなくてもいい」と分かった人ほど、この先を考える意味があります。

その話は、こちらのnoteにまとめています。

『【人生を守るために】いつか必ず来る「オルカン一本で後悔する日」に備えるプロの分散投資』

「オルカンをやめましょう」という話ではありません。

今回の記事で「自分はそこまで株式100%にこだわらなくてもよさそうだ」と感じた人が、次にどうやってリスクを落とすのかを考えるためのnoteです。

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